ガブリエル・バンサン

7月9日の日曜日は和歌山市民図書館にて、BL出版の代表取締役社長・編集者の落合直也氏と妻のすけのあずさのトークイベントが開かれた。

妻の過去2作の作品がBL出版より刊行されていて、その編集を手がけられたのが落合直也氏。いわゆる担当編集者。

トークイベントの前半は「うみのハナ」「やぎのタミエはおかあさん」の制作過程および秘話。

そして後半は落合さんの編集者としてのお話だった。

落合さんは文字の無い絵本の名作ガブリエル・バンサンの「アンジュール ある犬の物語」を世に送り出した編集者でもある。

トークでは「アンジュール」との出会い、「アンジュール」を出版するときの話、そしてバンサンとの交流などについて詳細に話してくれた。

そして落合さんの話、そしてトークイベント後に少しお話させていただいたことをふまえ、ガブリエル・バンサンという作家について、より興味を持ち、「アンジュール ある犬の物語」「ナビル ある少年の物語」「ヴァイオリニスト」「わたしのきもちをきいて I.家出」などを読んだ。

これまで「アンジュール」以外、ガブリエル・バンサンの作品を読んだことなかったが、どれもすばらしいと思った。

特に「ナビル ある少年の物語」「わたしのきもちをきいて I.家出」がとても気に入った。

どちらも物語に登場する台詞は少ない。しかし「ヴァイオリニスト」で今江祥智が「上質の映画のラストシーンのようなおしまいのページには、青年の弾くヴァイオリンの音色が聴こえるような気がします」と述べているように一冊の絵本が一本の映画を観ているかのような余韻、読後感を与える絵本である。そんな絵本にはなかなか出会えていない。

情報が溢れ、スマホで何でも事足りる現在において、本屋は過去にはその質問自体存在しなかった問いに答えないといけないようだ。それでもどうして私たちは本を手に取る必要、手に取る価値があるんですか?という問いに。そしてその問いに、ガブリエル・バンサンの作品、特に「ナビル ある少年の物語」がその答えの一つとなるだろうと思う。

本の醍醐味が集約された一冊。この作品が作り上げる読後感は間違いなく絵本の、本の持つオリジナルな価値の一つである。

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