中村安希さんトークイベント「旅すること 食べること」を終えて 後編

2023年6月4日日曜のその日。

前々日の6月2日金曜日の大雨被害により、前日の土曜日は急遽本業の仕事が大忙し。結局、本屋も臨時休業し、へとへとで何も準備ができませんでした。

しかも大雨被害により土曜日は終日JRきのくに線も運休し、日曜日も運休となれば中村安希さんをはじめ、電車で遠くからお越しいただく方が来れないという状況でした。

ただ辛うじて大阪方面からJR和歌山駅間を結ぶ阪和線は土曜日の状況でも運休されておらず、もし仮に日曜日が運休になれば、中村安希さんをJR和歌山駅まで迎えに行こうと考えていました。

6月4日日曜日のその日。結局JRきのくに線は通常通り復旧し、予定通りイベントを開催できました。

朝早くからバタバタと準備し、開始の14時より2時間前の12時にはおおむね準備が整いました。

後はお客さんといよいよ中村安希さんを待つだけとなりました。

開場の13時間前になるとお客さんが入ってきてくれました。長野や東京、京都などこのイベントのために来ていただいた方々もいて、ありがたかったし、中村安希という作家の力量を肌で味わうこととなりました。

そして無事、中村安希さんとも対面。インターネットや本の著者紹介の写真で見た印象にもちろん近かったけれど、やはり初対面。緊張しっぱなしでした。

そして始まったトークイベント「旅すること 食べること」は中村安希さんの著作「インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日」「ラダックの星」「もてなしとごちそう」をベースとした話を写真のスライドショーをベースに話を展開していただきました。

たくさんの話をしていただき、どれも興味深く感じました。そしてとりわけ一番印象に残ったことは自分が感じたことと同じようなことを中村さんも感じられたということでした。そしてきっと長く、いろいろなところを旅した人は同様に感じられたであろうとも思います。

「人」「星空」「鎖国国家」「イスラム国家」。たとえば中村さんがキーワードとしてあげられた旅のキーワードです。結局、これが良かったというキーワードです。
結局、人との出会いが旅をいかようにもするし、人が作った遺跡系は見慣れて飽きてくるけれど自然の絶景には飽きない、鎖国国家の方が他所の国のカルチャーや色が入ってきておらず独特で刺激的、イスラム国家の方が人や装いや街並みや文化が全然違う。

結局旅のひとつの醍醐味は今までに味わえなかったもの、どれだけ日本で味わおうとしても味わえないもの、その色が濃ければ濃いほど人の感情の奥底に浸み込み、とびっきりの経験となるというものだと思います。観光ガイドブックに載っているものを上から下まで体験することは、もちろん最初は楽しく、刺激的だけれど次第に飽きてくるのだと思います。

インターネットの普及によって、情報は湯水のように溢れ、世界はより近く、より便利になりました。航空券も安価に手に入るようになったし、行きたい場所の情報が手に取るように分かり、美味しい店はどこか、流行っている店はどこかをいとも簡単に分かるようになりました。

けれどその便利の果てには、多様ではない、画一的で、平面的な世界が待っているという気がします。それはきっと今の日本を旅するよりも、100年前の日本を旅する方が海外から来た旅行者が日本で感じる日本という国や文化の独自性をより強く体感することができるということだと思います。

便利、早い、分かりやすい、同じなどのキーワードの反対の世界にこそ旅の面白さが詰まっているのだと思います。

そんなことを中村安希さんのトークイベントを経て、また改めて感じました。

かといって旅はつまらないからやめるかと言われたらそれは別問題です。相反するようですがその本質的な面白さっていうのは案外普遍的だと思います。

またいつか中村安希さんとお会いしたいと思っています。

そして自分がお会いしたい方々をこれからもたくさんこの古いうるし工場にお呼びしたいと思っています。

終わり。

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